兜町大学教授の教え 無料メルマガ No.243 (2023年2月15日)



「当面、多少の調整局面入りをする可能性が高い」


 1月28日の早稲田と2月11日の出版記念講演会
では、多くの皆様にお集まりいただき、有意義な
勉強会をすることができました。
 早稲田大学様より再登板のご依頼を承りました
ので、今年の9月9日に、また早稲田大学で講義
をすることにいたしました。そして、その「補講」
と題して、9月30日辺りに講演会も予定しています。
 これらに関する詳細は、遅くとも8月にはこの
メルマガでご案内いたします。

 では、いつものように市況を展望します。今回は
後半にエッセイも掲載いたします。


1.市況展望 (執筆日時:2月15日 19時)


[1] 過去1ヵ月の日経平均株価を振り返ります

 日経平均株価は1ヵ月前の1月16日に付いた
「25,748円」が直近の安値となって、そこからは
上昇基調となって、2月15日現在、日経平均株価
は比較的高値圏で推移しています。
 厳密には、日経平均株価は2月6日に「27,821
円」の高値を付けて、それ以降は伸び悩んで、
高値もみ合いとなっています。

 日経平均株価のチャートを週足で見てみますと、
これからいくばくかの調整局面入りするような
様相を呈しています。

 2月の10日前後に、日銀の新総裁候補が国会
に提案されるということで、現・副総裁の雨宮氏
の名前が挙がりましたが、結局、新総裁候補は
植田氏に決まりました。
 植田氏はマクロ経済学の大家です。東大卒・
MITでPhDを取得後、大阪大学を経て、東大
教授となり、研究科長も歴任した、バリバリの
学者のキャリアをお持ちです。その間に、日銀
の審議委員も経験なさっており、適任中の適任
であると考えています。
 変に「日銀カラー」に染まった内部昇進では
なく、外部からの理論派が総裁になったのは
歓迎すべきことであり、日銀もやっとFRB
並みの「やり手の長」を得た、といったところ
です。

 この新総裁人事が市場に安心感を与えたと
いうこともあり、新総裁人事にまつわる市場の
不安は払拭されました。


[2] 向こう1ヵ月の日経平均株価の動向を
  予想します

 1月16日に配信したメルマガで、

「向こう1ヵ月の間は、為替市場に振り回され
ながらも、趨勢としては「戻り高値」を付けに
いくのではないかと考えています。」

と述べました。結果的にも、日経平均株価は
この予想のとおりになりました。

 そして、第3四半期決算発表はほぼ出揃い
ました。日経平均のEPSは、第3四半期決算
発表前の1月16日には「2,134円」でした。
そして2月15日のEPSの値が「2,109円」なので、
「微減」といったところです。
 2月15日の時点で、PERの値が「13.10倍」
なので、まだ割安ではあるものの、この
「13.10倍」というのは、昨年の8月中旬以来
の高い水準ですので、やはり目先のところでは
多少の調整局面がありそうです。

 また、1月16日に配信したメルマガで、

「このまま順調に戻り高値を付けにいったと
しましても、『27,700円前後』の水準を上に
抜けるのは、やや難しいかもしれません。」

と述べました。現実の相場でも、日経平均株価
の高値は「27,821円(2月6日)」までであり、
なかなか上には抜けていません。
 第3四半期決算発表の内容がパッとしません
でしたので、「27,700円前後」の水準を抜けられ
ずにいるのではないかといったところでしょう。


[3] 現時点における各種の指標を確認します

 2月15日の終値における各種の指標を見て
おきましょう。

日経平均株価の終値−− 27,501円
日経平均のEPSの値−−   2,099円
日経平均のPERの値−−   13.10倍
日経平均のBPSの値−−  23,609円
日経平均のPBRの値−−    1.18倍
週足のRSIの値−−−−   49.63↑
週足のストキャの値−−   90.60↓
日足のRSIの値−−−−    54.95↓
日足のストキャの値−−   44.52↓

 これらの指標を簡潔に吟味していきます。

 上にも書きましたが、PERの値がだいぶ
上がってきています。PBRの値も高値圏です。
PERとPBRの値の面からは、ここからの上値は
限定的である、ということになります。

 RSIとストキャスティックスといった
テクニカル指標(オシレータ)も、概ね
高くなっています。特に、週足のストキャ
の値が高くなっています。

 以上のことを総合すると、当面のところ
では、やはり多少の調整局面入りをする
可能性が高いといえそうです。


<市況展望は以上です。>

 市況展望の続きは3月1日に'foomii 
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2.エッセイ 「突き抜けろ! 日本の若者よ!」


[1] 安い国 日本 〜悲しい現実〜

 先日、渋谷駅にほぼ直結する「あるホテル」
に予約電話をしたのですが、驚き、かつ、
呆れてしまったことがありました。
 そのことに端を発して、日本の将来を憂う
と共に、今の若い人にエールを送りたいと
思い、これを書いています。

 渋谷の「あるホテル」の価格設定が、
あまりにも異常なのです!

 その「あるホテル」に、先日2月10日から
12日まで泊まったのですが、その部屋(広さは
約35平米)の料金は2泊で9万円でした。
 ちなみに、この2泊で9万円も、少し前に
比べたらかなり高いのです! 2〜3ヶ月前
は、2泊で6万円もしませんでした。

 そして、3月10日から12日の2泊を予約
しようとしたら、先日(2月10日からの2泊)
の約35平米の部屋よりもだいぶ狭い、約25平米
の部屋で、2泊で11万6000円だというのです!
(1泊58,000円。)
 面積が3割も狭いのに、値段が3割も高く
なっている!(実質的には85%の値上げ!!)

 そして、先月泊まった、その「あるホテル」の
一番広い部屋(約48平米)は、先月までは「1泊
5万5,000円」くらいだったのが、「1泊10万
5,000円」(!!)だというのです。90%の値上げ!!

 それで、あまりに呆れたので、予約係の人に

「室料がガンガンに高くなっていますよね!?
なぜですか?」

とズバリ言葉を選ばずに訊いてみました。
そうしたら、予約係の人が、

「受験シーズンなので。。」

というピンボケな答えをカマしてきましたので、

「いや、受験シーズンは今でしょ。3月10日〜
12日には、受験はほぼ終わってるでしょ」

と突っ込みました。そうしましたら、

「はぁ、まぁ、、。。
 実は、外国人のお客様が増えていまして。」

とのこと。

 つまり、外国人観光客が高くても泊まって
くれるから、ガンガン高くしちゃってるという
わけなのです。
(それに、ホテル業界も「コロナのリベンジ
値上げ」をしている、ということもある
でしょう。)

 そして、こういった場合には、
「インバウンド需要が回復してきまして」
という風にニュースとかでは言われていますが、
それはフェイク(=嘘)ニュースです。
 たしかに、「インバウンド需要」は回復して
きてはいますが、値段が8割も9割も上がる
には「インバウンド需要の回復」以外の理由が
なければ説得的ではありません。

 本質的には、外国人の「購買力」が上がって
いる、ということなのです。
(といいましょうか、日本人の「購買力」が相対
的に下がっている、ということでもあります。)

 日本人の平均年収は、昨今、「450万円」くらい
ですね。
 たとえばアメリカ人の平均年収は、円換算すると、
今や「900万円」(7万ドル)くらいになっています。
日本人の「ほぼ2倍」です。

 30年前は、日本人の平均年収が「450万円」
くらいで、アメリカ人の平均年収は(円換算で)
「300万円」くらいでした。当時は、アメリカ人
の平均年収は日本人の3分の2だったのに、
この30年でアメリカ人の経済力が3倍に成長
したから、円換算すると2倍になっている、
というわけです。

 それなのに、日本は30年間「成長ゼロ」。

 そのおかげで、相対的に考えると、日本人
の「購買力」はアメリカ人の2分の1にまで
落ち込んでしまった、ということなのです。

 世間では、値上がりするのは「為替が円安
だから」と思われているようですが、それは
大間違いです。

 なんとなれば、33年前(1990年)のドル円
レートは、今と同じくらいだからです。
<↓参照↓>
https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?b=JPY&c1=USD&e&s=&ym=Y

 外国人の購買力が強いのは、為替(=円安)の
せいではないです。
 諸外国の経済が成長したから外国人の購買力
が強くなったのです。それなのに、日本が成長
しなかったので、日本が「安い国」になって
しまっているのです、悲しいかな。

 日本が、「失われた30年」なんていう
ボケたことををカマしていた間に、諸外国の
経済はどんどん成長してきていた、ということ
なのです。

 おかげで、日本人は「1部屋1泊6万円」
を「高っ!!」って思いますが、アメリカ人は
「6万円」を日本人の「3万円」みたいな感覚
で把握するので、「あぁ、まぁそんなものかな」、
いや、たまの海外旅行なんだし、なんなら、
「安いな」となって、「1部屋1泊6万円」
の価格がまかり通っていってしまう、という
わけです。
「1部屋1泊6万円」は、日本人には高いけど、
外国人には「安い」のです。


[2] インフレが進みますが、皆様は大丈夫!?

 そして、さらなる問題は、こういう風にして、
「価格」というものは、どうしても国際化(=
ボーダーレス化)してしまうわけで、したがって、
世界が成長して購買力を上げているおかげで、
日本も否応なしに、その「インフレ圧力」に
晒される、ということなのです。
(渋谷のホテルの値段は、間違いなくインフレ
になっています。)

 これは、「コロナが終わったから云々」と
いった一時的な現象ではなく、経済成長力に
内外格差がある限り、これからもずっと続く
トレンドなので、日本人はこれからもどんどん
「良いモノ(やコト)」を買えなくなって
いくのです。

 暗澹たる気持ちになるのは私だけではない
はずです。。。

 もの凄く性格が悪いような発言になって
しまいますが、ハッキリ言ってしまいますと、

「私はたぶん、もう大丈夫だからイイですヨ。
でも、皆様は大丈夫なのですか!?」

ということになってしまいます。
(私は株式投資を中心にして、インフレ対策を
しっかり講じてありますので「たぶん、もう
大丈夫」なのです。)

 3年ほど前に、コロナが大騒ぎになっている
のに、日経平均株価が(短期的な暴落後に)
急騰していった時に、私はしきりに、

「世界的に、こんなジャブジャブ緩和を
したら、厳しいインフレになりますよ。
コロナ怖い怖い、と言ってる場合じゃない
ですよ。重症化率と致死率が所詮しれている
コロナよりも、『逃げ場のないインフレ』
の方が、よっぽど怖いですよ。皆さんは、
大丈夫なのですか!?」

と、ほうぼうで言って回っていました。
(このメルマガにも、過去のどこかに書いた
ような記憶があります。)

 その予測が現実化してきているのです。
 渋谷のホテルにやすやすとは泊まれなく
なってきているのです、インフレのおかげで。

 正確には「インフレのおかげで」ではない
ですね。
「日本が成長しないせいで」です。
 世界がインフレなのは、「それだけ経済が
成長している」ということなのです。
 経済が成長すれば、価格は上がってしまう
(=インフレになる)というわけです。

「いい加減、目を覚まそうよ!日本人!」

というかんじです。

 再び、もの凄く性格が悪いですけど、
敢えて言ってしまいますと、

「私は、この30年でガンガンに経済成長
したので購買力が外国人並みに強いです。
だからイイですけど、皆さんは、大丈夫
ですか!?」

ということになってしまいます。
(わざととはいえ、メチャクチャ上から
目線なので、メチャクチャ恐縮しています。)

 私は大学生くらいの頃に、

「僕は、Modern American, Future Japanese だ」

と気づいていました。
 アメリカでは普通の生き方だけど、
日本人としては、かなり先進的な生き方
しかできないな、と。
 ですから、私は日本では浮いてしまうの
です。それは今でも同じだと思っています。

 なんといいましょうか、「平均的な日本人
の価値観」は、私は持ち合わせていなくて、
みんなと一緒の生き方ではイヤだったですし、
そんなのできなかったです。


3.日本の若者よ、突き抜けろ!

 そして、ここで述べたことは、是非、
日本の若者にも伝えたいのです。

「一般的な日本人と同じモードでチンタラ
やってたら、これからは『アジアの小国
ニッポン』で、ショボくまとまっちゃうよ。
 各自で独創的な『稼ぐ力』を身に付けて、
独立独歩でガンガン、我が道を生きなよ!」

と。

 それが私の生き方だったのです。山あり
谷ありで、なかなか痛快な人生でした。

 そして、そのおかげで

「私はいいですけど、皆さんは大丈夫
ですか!?」

と思えるようにもなりました。

 これからの日本を生きる若者には、
是非ともそういう風に思えるように成長
していって欲しいものです、経済的にも、
人間的にも。
(なぜならば、こういう風に思えることは、
決して性格の善し悪しの問題ではないから
です。)

 渋谷のホテルの価格がバカ高くなって
いくのを観て、「安い国 日本」を憂い、
若者にエールを飛ばした、という次第です。

<今回は以上です。>




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