「インフレ圧力下での暴落待ち」
[1] 市況展望 (執筆日時:5月15日 26時)
(1) 前回のメルマガの見解を今回も踏襲します
前回(4月)のこのメルマガの市況展望で、
最初のタイトルを
(1) インフレが下支えになっていると考えられます
として、
「これまでの私の経験からの感覚では、現在の
ような状況下では、日経平均株価は、もうあまり
下がってこないかもしれないという感触があり
ます。
その背景には、決して『強気な何か』がある
のではなく、ひとえに『インフレ』による株高の
予兆ではないかと考えています。」
と述べました。
そして、金価格の上昇とからめて、
「金価格でデフレートすると(=金価格と比較
すると)「8.5%も下がっている」ということに
なるので、実質的には、現時点ですでにだいぶ
下がっているということになるのです。
そうだとしますと、今後も、名目値では、もう
あまり下がることはなく、むしろ上がっていく
ことすら想定してかなければならなくなるのです。」
とも述べました。
そして、現実の日経平均株価は、この記述の
ような推移を辿ってきています。
また、これも前回(4月)のこのメルマガの
市況展望で述べたことですが、2番目のパラ
グラフのタイトルを
(2) 急落局面があれば、それはピンチではなく、
チャンスです
としました。この見解についても、今回も
踏襲します。すなわち、
「もしも何らかのショックが勃発して、日経
平均株価に急落局面があれば、それはピンチ
ではなく、チャンスだ!」
ということです。
(2) 企業業績とPER・PBRについて
毎年5月15日になりますと企業業績
(3月決算企業の場合は本決算)が、ほぼ
出揃います。(5月16日以降に決算を発表
する企業も若干はありますが。)
5月15日の終値ベースでの日経平均の
EPSの値は「2,042円」です。
日経平均のEPSの値の最高値は2022年
11月14日、すなわち、2022年度の第2
四半期決算が出揃った時点における
「2,239円」ですから、最高水準からは
「8.8%」ほど低い水準です。
昨年(2022年)の5月16日(月)における
日経平均のEPSの値は「2,010円」でした
から、この1年間でほぼ「行って、来い」
になっているというわけです。
(32円は増益になっていますが。)
なお、昨年の5月16日における日経平均
株価の値は「26,547円」でしたから、企業
業績の水準がほぼ同じ水準の下で、日経
平均株価は「約11.6%」上昇しています。
これがまさに「インフレ分」なのでしょう。
この1年間で「約11.6%の資産インフレ」
が起こったということです。
東京市場におけるメインのプレーヤーは
外国人投資家です。諸外国では、この1年間
で11%程度のインフレは、当たり前のように
進行していますから、日経平均株価が11%
程度インフレになるのは、当たり前のことだ
というわけです。
そして、5月15日の終値ベースでの日経
平均のPERの値は「14.51倍」、PBRの値は
「1.25倍」なので、昨今としてはかなり
高い水準です。
その一方で、そもそもPERの値というのは
「15.0倍前後が妥当だ」と言われています
ので、「14.51倍」というのは異常に高い
水準ではない、ということになります。
PERの値が「15.0倍」ということの意味は、
15.0の逆数を取ることでわかるのですが、
株式の利回りが(1÷15=)「6.66%」だ
ということなのです。
現状とは異なりますが、通常は国債など
の安全資産の利回りは、およそ「1.66%」
くらいであり、国債よりはボラティリティ
が大きい株式に対する「リスクプレミアム」
は、通常は「5.0%」くらいだと考えられる
ため、その合計の「6.66%」というのが、
株式の利回りとして妥当だ、と考えられる
のです。
ところが、日経平均株価に関していえば
PERの値は、2018年の2月以降、コロナ
ショックの時期を除いて、非常に低い水準に
ずっと放置されてきていました。
日付 PER安値 PER高値 PBR安値 PBR高値
'18/ 2/ 5 14.47倍 1.30倍
'18/12/25 10.71倍 0.99倍
'20/ 1/20 14.59倍 1.18倍
'20/ 3/16 10.60倍 0.82倍 ←コロナショック
<コロナショックの直後からPERとPBRが無機能化し、
その状態が2021年5月中旬まで継続しました。>
'21/ 6/15 14.35倍 1.26倍
'21/ 8/20 12.59倍 1.15倍
'21/11/ 9 14.45倍 1.29倍
'22/ 3/ 9 11.94倍 1.10倍
'22/ 6/ 9 13.51倍 1.22倍
'22/ 9/30 11.95倍 1.09倍
このように、過去5年間は日経平均のPERの値は、
非常に低い時は「10倍台半ば」が2回付いており、
「12倍弱」が2回、「12.59倍」が1回です。
PERの高値は、「14.5倍前後」か「13.51倍」です。
そして、コロナショック後でいえば、日経平均
のPERの値は、およそ「12.0倍〜14.5倍前後」だった
のです。
また、日経平均のPBRの値は、およそ「1.1倍〜
1.3倍」だったことがわかります。
すると、現時点における「PERが14.51倍、PBRが
1.25倍」という値は、これまで5年間の中では、
かなり高い水準であるということになります。
というようなわけで、結論としましては、
「現時点の日経平均株価は、かなり高い水準に
あるので警戒は必要です。
一方で、これからインフレ(資産インフレ)が
本格化するのだとすれば、2021年に2回付いた
高値の「30,800円前後」や、それ以上の水準まで
日経平均株価が駆け上がっていく可能性も否定は
できません。」
ということになります。
資産インフレが進行する場合は、株式という
「資産」が選好される(好まれる)ので、上に
述べた「リスクプレミアム」(←通常は5%程度)
が低下し、3.33%くらいまで許容されるかもしれ
ません。
そうしますと、株式の利回りは「5.0%が妥当」
と認識され、PERの値は「20.0倍」くらいまで
許容されることになります。EPSの値を「2,040円」
とすると、日経平均株価は「40,800円」という
史上最高値に到達するといった青写真も浮かび
上がります。
(2,040円 × 20.0倍 = 40,800円)
このような高値が示現するかどうかは、
「インフレの進み方次第」ということになります。
[2] 向こう1ヵ月間の注目点
5月中旬〜6月中旬の注目点は、何と言っても
(1) アメリカの債務上限問題 と
(2) 日本の衆議院解散・総選挙があるかどうか
です。
(1) アメリカの債務上限問題
アメリカ政府の債務が上限に達するという問題
です。
これを乗り越えられないと、アメリカ発の大混乱
が発生し、株価も大暴落することになるので、警戒
は怠れません。
アメリカの金融当局は、パウエル氏やイエレン
女史を筆頭として、超弩級のブレインが集まって
いますので、この債務上限問題を乗り越えられない
ことはないと信じたいところです。
また、この債務上限問題のせいで、広島サミット
にバイデン大統領が出席できないかもしれないと
懸念されていたことは、今日の時点では解消された
と報道されました。それもひとつの安心材料です。
ただ、この債務上限問題が乗り越えられないと
すると、今月末〜6月月初にはアメリカ政府が
デフォルトに陥るということですので、今月末に
大暴落があるかもしれないというリスクはある、
というわけです。
これまでにも、アメリカは何度か債務上限問題
を起こしては乗り越えてきているので、今回も
無事にクリアすることを祈ります。
もしクリアできずに、株価が大暴落したら、
そこは千載一遇の買いのチャンスです。
(2) 日本の衆議院解散・総選挙があるかどうか
自民党は4月の統一地方選挙の後半で、4勝
1敗でした。そのうちの3つは辛勝とはいえ、
勝ちは勝ちですし、内閣の支持率も大きく回復
しています。
そして、今月は広島サミットもあり、そこで
岸田政権の実力をアピールすることができれば
はずみがつきます。
そしてなにより、岸田総理は来年秋の自民党
総裁選で再選を狙っているので、そのためには
今から来年秋までの間のベストな時期に、衆議院
を解散して総選挙で勝っておく必要があると
考えているはずです。
そうであれば、今年の6月解散・7月総選挙が
一番美味しいタイミングです。野党は腰砕けです
し、7月は安倍元総理が銃撃されて1年ですので、
「同情票」を狙うという姑息な手段に打って出る
可能性も高いです。
もし衆議院解散・総選挙が、このシナリオ通りに
進むとしたら、6月からは「選挙相場」が始まり、
株高になることが予想されます。
(3) 一番都合が良いシナリオ
以上のようなことを総合しますと、我々個人
投資家にとって一番都合が良いシナリオは、
「今月末か6月1日に債務上限問題が火を噴き、
一旦は株価が暴落するも、6月上旬には、衆議院
解散・総選挙が発表され、『選挙相場』による
株高になる」
というものです。
(4) 総括
いずれにしましても、インフレ圧力は、まだ
序の口ですので、株式に対しては強い上昇圧力
が根底に渦巻いています。そういった中にあって、
株安の悪材料が噴出して株価が暴落した時は、
勇猛果敢に買いに向かうべきところです。
ましてや、投げ売りは禁物です。
今、採るべきスタンスは、「インフレ圧力下
での暴落待ち」です。
<市況展望は以上です。>
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