兜町大学教授の教え 無料メルマガ No.252 (2023年10月16日)


「当面は軟調だが、11月2日以降は株高」


 いつものように、市況を展望します。
(執筆日時:10月16日 3時)

[1] 過去1ヵ月間の日経平均株価の推移

 まず、9月15日から10月13日までの
1ヵ月間の日経平均株価の推移を辿って
みます。

 9月15日に付いた「33,634円」が直近の
高値になり、10月4日に向けて下落し、
「30,487円」の安値を付けました。
そして反発して、10月13日には「32,533円」
まで戻っています。

 8月14日配信のこのメルマガで、

「当面の下値は30,000円前後ではないか。」

と予想しました。結果的には「30,000円の
少し手前」で底打ちしたというわけです。


[2] 日経平均株価の行方

 今年5月以降の日経平均株価の日足
チャートを見てみますと、次の2つの
特徴が見てとれます。

<1> 「33,600円台〜33,700円台」で頭打ち
  になっている。

<2> 6月19日に「33,772円」の高値を
  付けてからは、下値を徐々に切り
  下げてきたが、上値はあまり切り
  下がっていないので、右肩下がり
  のボックス圏推移とは言えない。

 このような形状になるのは、かなり
珍しいので、予測がしにくいのですが、

・日本経済がインフレの真っ只中である
 こと
・10月4日の市場のムードがかなり冷えて
 いたこと
・10月4日からの戻りが急速であったこと

を考慮に入れますと、10月4日の安値を
大きく下回る下落はもうないか、あっても
ごく一時的なものになるであろうと予想
しています。

 ただし、10月4日からの戻りが急速で
あったことから、当面はやや下落基調に
なる可能性があります。


[3] これから注目すべき点

 注目すべきは、向こう1ヵ月の間に
6月19日に付いた「33,772円」の高値を
上に抜けるかどうかです。

「向こう1ヵ月の間」というと、その間に
まず日銀政策決定会合とFOMC(10月31日)
があります。
 大方の予想では、アメリカは「今回10月末
には利上げを見送る」と考えられています。
そして、12月にもう一度利上げをするか
どうかについては、「7:3」で利上げは
しない、というように予想します。
 アメリカが最も重視しているのは、現在
のインフレの抑制ですが、それと同時に、
景気については、あくまでもソフト
ランディングを重視しています。ですから、
年内にもう一度利上げをすることは、やや
リスキーなので、現時点では、「7割の
確率で利上げはしない」と考えられるの
です。

 むしろ注目すべきなのは日銀の姿勢です。

 今回10月末に、はっきりと利上げ方向に
動けば、株式市場はかなり動揺するでしょう
けれども、これまでのように「モーション」
のような利上げ姿勢であれば、日経平均株価
の下落は一時的なものになるでしょう。
 そして、私は後者になるであろうと予測して
います。
 すなわち、日銀は「モーション的な」利上げ
姿勢を示す。そこで、日経平均株価が一時的に
下落するが、大きな下落には発展せず、11月の
1日か2日には、底打ちして反転を開始すると
予想しています。

 なぜそう予想するかといいますと、日本は
「利上げできない国」だからです。日本政府
が「借金大魔王」なので、利上げはできない
のです。そして、インフレ政策と株価の上昇
を国是としていますから、日本発の株価暴落
は絶対に起こさせないでしょう。

 このように考えると、当面、10月末までは
軟調な展開になりそうですが、下落基調は
10月末までで、11月の1日・2日には、
「日銀政策決定会合とFOMC」を通過する
ので、そこからは日経平均株価は反転して
上昇基調になるのではないかと予想して
います。
 もちろん、今月末の日銀政策決定会合の
発表内容次第では、一時的に株価が急落して、
再び「30,000円〜30,500円」まで下落する
ことも考えられますが、「30,500円」まで
下がれば、「二番底」を形成しますし、
「30,000円」まで下がれば、下値抵抗線に
接しますので、それが底になる可能性が
高いと考えられます。

 いずれにしましても、10月末か11月上旬
には安値を付けて、年末まではインフレ
の亢進によって株高、といったシナリオに
なりそうです。

 そして、向こう1ヵ月の間には、第2
四半期決算発表(11月15日まで)という
重要なイベントがありますので、年末に
向けて株高になるのかどうかは、インフレ
の亢進だけではなく、この企業業績にも
大きく依存することになります。


[4] 企業業績について

 では、その肝心の企業業績について
ですが、10月13日の時点までで、すでに
「2月(と8月)決算企業」(以下では
「2月決算企業」という)の企業業績は
出揃っているのです。
 ただ、「2月決算企業」というのは
少数派なので、一概には何とも言えない
のですが、日経平均のEPSの値を見る
限りでは、その水準は、若干ですが
増益になっています。
 2月決算企業の企業業績が出てくる
前の9月22日の日経平均のEPSの値は、
「2,059円」でした。
 そして、2月決算企業の企業業績が
出揃った10月13日の日経平均のEPSの
値は、「2,108円」です。
 額にして「49円」、率にして「2.4%」
の増益です。
 少数派の2月決算企業の企業業績が、
全体に対して「2.4%」のインパクトを
与えたわけですから、これは比較的
大きな増益であるといえます。

 ということは、この事実から推察
しますと、3月決算企業の第2四半期
決算発表においても、かなりの増益に
なる可能性がありますので、もしそう
だとすれば、年末は株高になると考え
られます。

 企業業績が出揃った11月15日の日経
平均のEPSの値が、たとえば「2,200円」
まで増加するとします。
 そして、好業績を背景にして、日経
平均のPERの値が、たとえば「16.0倍」
に達するとしますと、

 2,200円 × 16.0倍 = 35,200円

という値が導出できますので、
「年末に35,000円というのが現実的
になってきます。
 2月決算企業の業績が、3月決算
企業の業績の様子を先取りしている
と考えれば、こういった株高のシナ
リオは、決して楽観的な予測では
ないということになります。


[5] 当面の懸念材料

 一方で、当面の懸念材料としまして
は、次に掲げるものがありますが、
いずれもかなりの程度までは「織り
込み済み」になっているような
かんじがします。

(1) 中国の不動産不況
(2) イスラエルでの戦乱の行方
(3) ウクライナ戦争の行方
(4) 日米の中央銀行の利上げ

 これらの中でも、今月に入って新たに
加わったのは、(2)の「イスラエルでの
戦乱」です。

 戦争は全て悪です。
 ウクライナもイスラエルも、
「終結あるのみ!」
です。

 この戦乱の行方のこともさりながら、
私が違和感を覚えるのは、マスコミの
報道姿勢です。
 ズバリと言ってしまえば、

「イスラエルで戦乱が始まったら、報道
各社が扱うのは、そればっかりじゃない!?
 ウクライナのことは、もう関心がないの
かな!?」

という違和感です。

「ウクライナの戦乱は、次なる新たな戦乱
が勃発したら、忘れられちゃう程度のこと
だったの?
 だとしたら、イスラエルの戦乱だって、
次なる大きな問題が起こったら、関心が
そがれてしまう程度のことだったりして!?」

という強烈な違和感を感じます。

 マスコミの報道は、結局、目先のこと
(=みんなが関心を持ちそうなこと)に
偏るのです。ですから、情報を正しく
整理する力(=情報リテラシー)を
持たないといけないと思います。
 マスコミの偏向報道に振り回されて、
付和雷同になるのは厳に慎みたいところ
です。


 さて、市況展望に話を戻して、締め
くくります。
 この[4]で4つ掲げたような懸念材料
がある限り、想定外の株価下落は、いつ
起こってもおかしくはないので、ここで
予想したシナリオも大きく崩れるかも
しれませんが、混乱に翻弄されて狼狽
売りをするのは、避けなければならない
と常々思っています。


<市況展望は以上です。>


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