兜町大学教授の教え 無料メルマガ No.253 (2023年11月15日)



「12月上旬に向けて、株高」


 いつものように、市況を展望します。

[1]〜[6]までの執筆日時は、11月14日 24時。
[7]の執筆日時は、11月15日 18時半。


[1] 過去1ヵ月間の日経平均株価の推移


 まず、10月16日から11月14日までの
1ヵ月間の日経平均株価の推移を辿って
みます。

 10月16日に付いた「31,999円」が高値
になり、10月30日に向けて下落して、
「30,538円」の安値を付けました。これは
10月4日に付いた「30,483円」の「二番底」
です。
 そして反発して、11月13日には「32,913円」
まで戻っています。

 9月15日配信のこのメルマガのタイトルを、

「当面は軟調だが、11月2日以降は株高」

としました。実際の株価推移も、この予想
どおりの展開になりました。


[2] 日経平均株価の予想の仕方

 今回は、ものの見事に予想が的中した
わけですが、予想が的中した時にお伝え
すべきことは、「予想が的中しました!」
という武勇伝(自慢話)などではなく、
「どのような思考プロセスを採れば、
予想を的中させることができるのか」
というノウハウこそが、重要な「お伝え
すべきこと」だと考えています。

 前回の予想を立案した10月15日の時点
における思考プロセスは、次のとおり
です。

<1> 10月31日に日銀政策決定会合と
  FOMCがある。これは予想では
  なく、事実である。

<2> 日銀政策決定会合とFOMCでは
  利上げの有無が議論されることに
  なる。これは予想ではあるものの、
  限りなく、事実に近い予想である。

<3> 事実としての利上げの有無に関わ
  らず、「利上げ懸念」がある時には
  株価は軟調に推移することが多い。
  これは事実ではないが、有力な
  経験則である。

<4> したがって、10月31日までは
  利上げを懸念して、株価は軟調
  に推移する可能性が高い。
  これは予想である。

<5> 次に、10月31日を経過すると、
  「利上げ」という懸念材料が
  出尽くすので、今度は11月15日
  までに出揃う企業業績の動向に
  市場の注目は急激にシフトする。
  これも、有力な経験則である。

<6> そこで、企業業績はどうなるのか
  が関心の中心になるが、その正確
  な予想は難しい。
  ただ、ここで有力な参考となるのは、
  2月決算企業の決算結果である。

<7> 2月決算企業の決算結果は、すでに
  10月13日までに出揃っており、2月
  決算企業の好業績が日経平均のEPSの
  水準を「2,059円」から「2,108円」
  まで「2.4%」引き上げた。これは
  予想ではなく、事実である。

<8> 2月決算企業というのは少数派である。
  その少数派の決算が出ただけで、全体
  の日経平均のEPSの水準を「2.4%」も
  押し上げたということは、2月決算企業
  に食品会社が多く、食品会社は価格転嫁
  がしやすく、業績が上振れしやすい企業
  が多いことを考慮に入れても、企業業績
  の趨勢はかなり上向きであることがわかる。
  これは予想ではなく、事実である。

<9> そして、2月決算企業「だけ!」が
  好業績であり、3月決算企業の業績
  だけが奮わない、と考えるのは妥当
  ではない。
  すると、11月15日までに出揃う
  3月決算企業の第2四半期決算の
  結果も増益となると考えるのが妥当
  である。これは、予想ではなく、
  論理的推論である。

<10> ということは、10月31日を経過すれば、
  株式市場の注目は企業業績に移り、
  それが好調である蓋然性が高いので、
  FOMC明けの11月2日からは日経
  平均株価は上昇に転じる。
  これは、予想ではなく、論理的推論
  である。


 以上の<1>〜<10>をお読みいただくと
おわかりのように、予想を立案するに
当たっては、できる限り「予想」の要素
を少なくして(ましてや、「期待」は
完全に排除して)、「事実」を「論理」で
組み立てて、「論理的な推論」として
「予想」を組み立てるようにすることが
肝要です。
 そうすることで、「予想」の確度を引き
上げることができる、というわけです。

 なお、ここに述べた思考プロセスの
具体的な中身は、10月16日配信のこの
無料メルマガの[3]と[4]に詳しく
述べてありますので、復習がてら、
そちらを読み返していただければ、
より理解が深まると思います。

<↓10月16日配信の無料メルマガ>
http://www.prof-sakaki.com/zemi/merumaga/detail_252.html


[3] 今後の日経平均株価の行方

 上の[2]でも述べましたが、現在の
注目点は「企業業績」で、その水準は
事前の予想どおり、かなり高い水準まで
上がってきています。
 11月14日の終値の時点における日経
平均のEPSの値は「2,221円」です。

 そしてここで、1つ前の第1四半期
決算発表の時に、どういう経緯を辿った
かを観てみることで、これから1ヵ月先
の日経平均株価の行方を予測してみます。

 第1四半期決算発表が出始める直前の
7月21日の終値の時点における日経平均
のEPSの値は「2,152円」でした。
 そして、第1四半期決算発表が出揃った
後の8月15日の終値の時点における日経
平均のEPSの値は「2,138円」でした。
 第1四半期決算発表においては、企業
業績は微減だったのですが、企業業績が
高水準を維持しているというのはたしか
です。
 それからちょうど1ヵ月経った9月15日
には、日経平均株価は「33,624円」という
直近の最高値を付けています。
 企業業績が落ち込まなかったという
事実を織り込むのには、「1ヵ月かかる」
ということが、ここからわかります。

 なお、この9月15日における日経平均
のPERの値は「16.11倍」でした。この
時点において、日経平均のEPSの値が
「2,063円(1ヵ月で3.5%減少)」まで
下がっていたために、PERの値が「16.11倍」
という高い値になったということもあり
ますが、9月15日においては日経平均株価
そのものの水準も直近の高値を付けている
わけですので、やはり好調な企業業績を
織り込むのには、「1ヵ月かかる」という
ことだと言えそうです。

 そして、11月14日の終値の時点における
日経平均のEPSの値は、「2,221円」で
あり、これは史上最高値に近い水準です。
(日経平均のEPSの値の史上最高値は
ちょうど1年前の2022年11月14日に付いた
「2,239円」です。)

 この高水準の企業業績を織り込むのに
「1ヵ月かかる」とすれば、12月15日
前後に、日経平均株価はかなり高く
なっている、と予想されます。
 ただし、下の[5]で述べるように、
12月には19日に日銀政策決定会合があり
ますので、今回の上昇基調は1ヵ月は
持続しない可能性が高いです。
 ですから、高値が付くのは12月の
上旬くらいではないかと予想しています。

 12月上旬においても、日経平均の
EPSの値が、現在と同じ「2,220円」
近辺の水準を維持していると仮定して、
高値におけるPERの値を「16.1倍」と
仮定すると、

 2,220円 × 16.1倍 = 35,742円

という数字が浮き彫りになります。

 また、第1四半期決算の1ヵ月後の
時のように、「12月上旬には日経平均
のEPSの値が、3.5%減少している」
と仮定しても、12月上旬の時点の日経
平均のEPSの予想値は「(2,220円 
× 0.965 =)2,142円」となり、同じ
ように「16.1倍」をかけると、

 2,142円 × 16.1倍 = 34,486円

という数字が算出されます。

 ただし、本日から12月上旬までの
期間があまり長くないので、この水準
までは行くのは、時間的に、やや難しい
ようなかんじがします。

 すなわち、これから12月上旬までに、
日経平均株価は年初来高値の「33,772円」
を目指す可能性がある、ということに
なります。
 この予測は決して「強気」とか「楽観」
によるものではなく、「数字による客観」
的なものです。


[4] 懸念材料

 一方で、いつも述べていますが、市場
には常に「懸念材料」もあります。
 当面の懸念材料としては、

(1) 中国の不動産不況
(2) イスラエルでの戦乱の行方

が顕在化していますし、

(3) その他の想定外のリスク

もあります。

 ですから、こういった懸念材料の動向
によって、ここでの予測は台無しになる
かもしれません。
 しかしながら、そういった懸念材料も
ある程度は織り込みながら、通常の範囲
内で考えるのであれば、ここで述べた
ような株価推移になるということが予想
されます。


[5] 12月中旬以降は下落基調へ転換

 ここまででは、12月上旬までの株高を
予想してきました。
 ここでの予想どおり、12月の上旬辺りで
日経平均株価がピークを付けるとしましても、
その後は下落基調に転じる可能性があります。
 なぜなら、12月19日に今年最後の日銀政策
決定会合があるからです。

 ここでも、また「利上げ」方向の、何らか
の政策変更が充分にあり得ますので、12月の
上旬以降は、市場参加者がこの「利上げ」を
懸念し始めますので、日経平均株価はまた
軟調な展開になることが予想されます。
 この予想も、「予想」ではありますが、
上の[2]の<3>と<4>に述べたことと同じく、
有力な経験則に基づく予想です。

 したがいまして、ここでの予想どおりに
日経平均株価がこれから上昇基調になった
場合でも、年初来高値の「33,700円前後」
を付ける(または、それを超える)辺り
からは、いつ下落に転じてもおかしくは
ないので、そのように心づもりをして
おかなければなりません。

 12月に入って、
「日経平均株価が年初来高値を更新
しました! 28年ぶりの高値です!」
というような報道があったら、それは
もう「売り時」のサインです。
 日経平均株価が年初来高値を更新
するようなことになれば、
「来年は、新NISAが!」
とか
「円安を背景に、一層の株高が!」
とかいった「株高ムード」が蔓延し始め
ますが、そういう時こそが、「売り時」
なのです。


[6] アメリカの消費者物価指数

 14日の22時までに、上の[5]までを書き
終えて、14日の22時半に発表になった
アメリカの消費者物価指数のニュースを
観ました。
 アメリカの消費者物価指数が市場の事前
予想を下回ったことで、年末に向けての
「年末ラリー(=株高)」が始まりました。
 ここでの予想どおりの展開になる地盤が
固まりました。

 一方で、12月には12日〜13日にFOMC
があり、17日にはアメリカ議会の予算上限
問題の期限があります。そして、上述の
ように、19日には日銀政策決定会合があり
ます。
 「FOMC・予算上限問題・日銀政策
決定会合」の3点セットが全て無難な
内容であれば、年末に向けて、もう一段高
になることもあり得ます。
(これを「掉尾の一振」といいます。)

 その場合でも、3点セットが全て無難な
内容になるかどうかは事前にはわからない
ので、12月上旬には一旦、「調整ムード
(=若干の下落)」になるでしょう。

 そして、これら3つのいずれかで問題が
勃発すれば、下落に転じることになります。
 12月上旬に、みんなが株高で浮き足立って
いる時にこそ、気を引き締めたいところです。

 12月中旬以降の市況は、次回のメルマガ
で、また展望することにいたします。


[7] 11月15日に急伸
(この[7]の執筆日時は、11月15日 18時半)

 すぐ上の[6]で述べた「アメリカの消費者
物価指数」の発表を受けて、金利先高懸念が
和らぎ、前日のNYダウが489ドル上昇した
流れを受けて、15日の東京市場は爆上げ状態
になりました。

 15日は大幅な上昇となり、早くも警戒水準
である「33,700円前後」に近づきました。
「33,700円前後」のところでは、高値もみ合い
または若干の調整が入るような状況になると
予想されますが、この勢いが持続した場合
には、34,000円台突入も充分あり得ます。

 15日の終値ベースの日経平均のEPSの
値は「2,257円」になっており、先月からの
予想どおりの水準になりました。
 この「2,257円」は、史上最高値です。

 日経平均のPERの値は「14.85倍」で、
まだ低い水準にありますので、上値の余地は
大きいといえそうです。
 もし、日経平均のEPSがこのままの水準
を維持して、PERの値が、上のように
「16.1倍」になると、

 2,257円 × 16.1倍 = 36,338円

という数字が視野に入ってきます。

 しかしながら、33,700円台を上に抜けた
後は、やはり常に高値警戒を必要とする
局面となると考えておかなければなりません。


<市況展望は以上です。>


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