「最速でボックス圏を上に抜けてきました」
[1] 市況展望(執筆日時:7月15日 25時)
(1) 過去1ヵ月を振り返ってみます。
6月10日の始値が「38,689円」で、17日に
付いた「37,950円」が当面の安値になりました。
前回の無料メルマガで、
「当面、秋までは、
『37,000円〜41,000円のボックス圏相場』
が続くと予想しています。」
と述べて、過去のデータを多角的に検証
しました。その結論部分でも、
「一番ありがちなのは、
6月高値で、一旦は下がるが、8月〜年末
にも高値が付く
ということであろうと考えられます。」
と述べました。
しかし、「一旦は下がる」という局面が
なく、ボックス圏を上に抜けました。
日経平均株価は、7月5日に「41,100円」
を付けて、翌日は「40,780円」まで下がり
ましたので、ここまでは「37,000円〜
41,000円のボックス圏相場」でしたが、
「秋までは37,000円〜41,000円のボックス圏
相場が続く」という予想に反して、7月9日
から、このボックス圏を上に抜けてきました。
想定より早くボックス圏を上に抜けて
きましたが、早ければ「8月には高値が付く」
という予想もしていましたので、その「最速
のパターン」になりそうな様相を呈してきて
います。
なぜこんなにも早くボックス圏を上に
抜けたのかについて考えてみましたところ、
次の2つの要因によるのではないかという
見解に到達しました。
@ バイデン大統領の高齢不安が再燃して、
バイデン大統領は当選しないであろう
という予測が台頭し、そうなれば、
ウクライナ戦争が終結するのではないか
と市場が期待し始めたこと
A 円安が持続しており、外国人投資家
の旺盛な買いが続いていること
A−2 円安が持続していることで、第1
四半期決算でも、業績の上方修正が
たくさん出るのではないかという期待
が膨らんだこと
これらについて、以下でもう少し補足
します。
@について
ウクライナ戦争は、本質的にはロシア
対ウクライナの戦争ではありません。
ロシア対アメリカ(バイデン大統領)の
戦争です。場所はウクライナで、ゼレン
スキー大統領が前面に出ていますが、
実質的にはロシア対アメリカ(バイデン
大統領)の戦争なのです。
バイデン大統領は、アメリカの軍需
産業の手先で、戦争遂行を後押しして
います。アメリカ大統領が、トランプ氏
に代われば、ウクライナ戦争のこのような
本質的な構造が崩れます。
それに、トランプ氏は自らが大統領に
なったら、「ウクライナ戦争を終わらせる」
と言っています。
戦争が終わることは、人類の平和の
観点からはもちろん、とても良いことです
し、経済の面でも、サプライチェーンが
正常化して、インフレが収まりやすくなる
などのメリットがたくさんあります。
ですから、バイデン大統領の撤退に
市場が反応して株高が進行した、という
側面はおおいにあると考えられます。
これによって、ボックス圏の上っ放れが
早まったのではないかと推察しています。
そして、「バイデン大統領の撤退」は
今のところは「トランプ氏の勝利」を
意味しますので、バイデン大統領の撤退
で株高になったということは、
「大統領選でトランプ氏が当選した場合
には、株高が起こる」
という「答え」を先に教えてくれたような
ものです。
なお、バイデン大統領の撤退は、
時間の問題だと思いますが、次の候補
はハリス副大統領だと目されています。
このハリス副大統領は台風の目に
なりそうです。
トランプ氏は「相手がバイデンなら
勝てるぜ!」と思っているでしょうが、
相手が「史上初の女性大統領」となると
ハリス候補に女性票を多く獲得されやすく
なってしまうので、手を焼くことになり
そうです。
トランプ氏は2016年にはヒラリー・
クリントン女史に競り勝っていますが、
今度はトランプ氏自身が初当選ではなく
二度目なので、新鮮みには欠けますし、
トランプ氏の良くない点も浮き彫りに
なっていますので、トランプ氏は
女性候補を相手にすると、今回は苦戦
を強いられる可能性があります。
(ここまでの原稿は7月11日の昼間に
たたき台を書いたものです。7月14日
に発生した「トランプ氏銃撃事件」に
ついては、下の[2]で述べます。)
Aについて
上の原稿は、7月11日の昼間に
たたき台を書いたのですが、7月
11日の夜に、アメリカの消費者物価
指数が発表になったことで、急激な
円高が発生しました。
振れ幅が大きかったことから、私は
このタイミングを狙って、財務省も
為替介入を行ったのだと考えています。
(財務省は常々、「過度な為替の
変動は望ましくない」と言い続けて
いますが、「過度な為替の変動」を
起こしているのは財務相自身である
ということに、「日本一の頭脳集団」
である財務省がなぜ気づかないのか
不思議でなりませんが:苦笑&毒舌)
この円高を受けて、第1四半期決算
発表における業績の上方修正への期待
が剥落して、12日の東京市場は寄り
付きから大幅安になり、前日比で
1,000円を超える下げ幅となりました。
これは、「11日の高値(42,426円)
が当面の高値になる」ということを
示す典型的な相場展開です。
ただ、円高とは言っても、161円を
超えていたものが「158円前後」に
なっただけですから、俯瞰してみて
みれば、まだ円安の状態であること
には変わりはありません。
その点に気がつく必要がありますし、
どんどん円安に向かっていかないこと
や、後述する「トランプ氏銃撃事件」
を考慮に入れますと、円安トレンドは
まだ続きそうな気配です。
(2) 現時点のファンダメンタルズ指標
ここで、現時点におけるファンダ
メンタルズの各指標を見ておきましょう。
直近の最高値が付いた7月11日の
終値ベースでの日経平均株価のPER
の値・EPSの値とPBRの値・BPS
の値、そしてROEの値は、以下のように
なっています。
・PERの値 17.58倍
・EPSの値 2,402円
・PBRの値 1.57倍
・BPSの値 26,894円
・ROEの値 8.9%
それぞれについて簡潔にコメントします。
・PERの値について
3月22日に日経平均株価が、それまでの
最高値である「41,087円」を付けた時の
PERの値が「17.38倍」でしたので、
現在の「17.58倍」というのは、かなり
高い値です。
今年の5月7日には「17.74倍」という
値が示現していますが、その時はEPS
の値が「2,189円」という低めの値だった
ために、PERの値が高くなったのです。
しかし現在は、EPSの値が「2,402円」
という史上最高水準ですので、EPSの値
が低いからPERの値が高くなっているの
ではありません。
現在は、EPSの値が史上最高水準に
ある中でPERの値が高くなっているので、
純粋に「PERの値が高い」のです。
・EPSの値について
そして、EPSの値が「2,402円」という
史上最高値になっていますから、これが
現在の株高の主要因であろうと考えられます。
上に述べたバイデン撤退説は、現在の株高
の「定性的な要因」で、この好調な企業業績
と、長引く円安が、現在の株高の「定量的な
要因」です。
ただし、「好調な企業業績」とは言っても、
これはインフレによるところが大きいと
考えています。すなわち、インフレが亢進
すれば、売上高も原価も利益も、その数値が
大きくなるからです。
利益は、「売上高 − 原価」で求められ
ますので、たとえば、
売上高(100) − 原価(70) = 利益(30)
だったものが、20%のインフレになれば、
企業は何も努力をしなくても、
売上高(120) − 原価(84) = 利益(36)
となり、利益の値も20%増える、という
わけです。
このような原理で、インフレ経済下では
企業業績の水準が上がり、それを反映して
株価も上がる、ということなのです。
これが、「株式にはインフレ対抗力がある」
とかねてからお伝えしていることの原理的な
説明です。
・PBRの値とBPSの値について
PBRの値も「1.57倍」になっており、
非常に高い水準です。
やはりこれも、3月22日に日経平均株価
が、「41,087円」を付けた時のPBRの値
が「1.57倍」でしたので、それと同じ水準
になっています。
ですから、指標的には、「42,426円」
というのは、当面の高値になっても
おかしくはない水準です。
・ROEの値について
ROEの値は「8.9%」なので、特段の
改善があったわけではありません。
その点から考えますと、EPSの名目値
(=見かけ上の値)は史上最高値ですが、
企業の収益力そのものが向上したわけでは
ないという点は、芳しくはないことです。
さらなる日経平均株価の上昇のためには、
このROEの値(企業の資本収益率)の
向上が必要です。
<結論>
現時点におけるファンダメンタルズ
の各指標を見る限りでは、11日に付いた
「42,426円」が当面の高値になりそう
です。
一方で、今月の下旬から8月10日頃に
かけて第1四半期決算発表シーズンに
なります。ここで企業業績が上方修正
される場合には、もう一段の上昇も
あり得ますが、それまでは「調整地合い」
になるのではないかと考えています。
(3) ひとつの仮説
これから年末にかけて、日経平均株価
が「42,500円」を大きく超えて、45.000円
やそれ以上に上がっていくとしたら、それ
には「企業業績の伸張」が欠かせない要件
なのはもちろんですが、もうひとつの要因
としては、現在20代後半とか30代といった
「若い世代の力」が、その原動力になる
のかもしれない、という仮説を立てました。
現在20代後半とか30代といった若い世代
の人達は、1980年代後半のバブル経済は
もちろんのこと、1990年から2012年までの
グダグダと下落する株価推移をほとんど
知らないのです。
そして、学校を出て、働き始めた頃から
(すなわち、自分でお金を稼ぐように
なってから)は株高が当たり前の時代に
なっているのです。
そういった若い世代にとっては、「株は
上がるもの」なので、40代以降の世代とは
株式投資に対する心証が全然違うのだろう
と思います。
そういった新しい世代や、購買力が高く
なった外国人によって、株価が上に引き
上げられる力が強まれば、日経平均株価
は未曾有の領域に突入していくこと
でしょう。
まずは、目先の調整地合いがいつまで
続くのか、そしてどこまで下がるのかを
見極めてから、次の展開を考えていく
のが適切でしょう。
[2] 「トランプ氏銃撃事件」について
このメルマガの原稿を執筆中の14日
の夜(日本時間)に、トランプ氏銃撃事件
が勃発しました。
「トランプ氏はアメリカの巨大資本家
(=利権集団)にとって『不都合な人物』
である」ということが、またもや露呈
しました。
2020年当時、このメルマガで、「新型
コロナ騒ぎはトランプつぶしが第1の
目的で、それに乗じて、ワクチン利権が
跋扈した」ということを何度か述べました。
激しく中国を叩いたトランプ氏は、
中国からも「不都合な人物」であると
され、お金の力では言うことを聞かない
トランプ氏はアメリカの巨大資本家からも
「不都合な人物」であるとされました。
アメリカの巨大資本家と中国の利害が
珍しく一致して、「新型コロナの大混乱で
トランプをつぶそうぜ」となったのです。
そして今回、バイデン大統領の高齢
不安が頂点に達して、「このままでは
トランプが当選してしまう」と焦った
アメリカの巨大資本家が、遂に「暗殺」
を実行したのでしょう。
間一髪で九死に一生を得たトランプ氏
は、逆に猛烈に優勢になりました。
なお、この暗殺未遂事件を、この機に
及んで、まだ「トランプ陣営の自作自演だ」
という意見を言う輩がいますが、愚の骨頂
です。
選挙戦というのは「生き馬の目を抜く」
戦いですので、こういった事件を自作自演
して、自陣を優勢に持っていこうという
戦略を採る候補者がいると考えるのも
「うがった見方」としては、ひとつの
考え方かもしれません。
しかし、今回の事件を「自作自演だ」
と結論付けるのは、思慮が浅すぎると
いう他はありません。
その理由は、次の2点です。
1.仮に「自作自演」だとします。
その場合は、「自作自演だということ
が万一バレてしまうリスク」も伴います。
バイデン氏の高齢不安で、すでに優勢に
立っているトランプ氏が、そんな「リスク」
をとる必要はありませんし、とるはずも
ありません。
2.非常に有能なスアイパーであれば、
あのようにギリギリの狙撃もできるの
かもしれませんが、万一、狙いを外して、
「本当に銃殺してしまうリスク」を考慮
に入れれば、あのようなギリギリの狙撃
はしません。あれは、マジなやつです。
そして、この暗殺未遂事件を「自作自演だ」
とする意見が出てくることそのものが、
「トランプつぶし」以外の何ものでもない
のです。
そういった「真贋」を見極める目が必要
です。
そして、この暗殺未遂事件によって、
大統領選挙戦のみならず、日米の株式市場
の潮の目も大きく変わりました。
「トランプ・ラリー」が始まる可能性が
高まりました。
「トランプ・ラリー」とは、アメリカに
おける「株高・金利高・ドル高」です。
もちろん、日経平均株価にも強い上昇圧力
がかかることでしょう。
7月11日までに書いた上の[1]の論調は、
14日の一夜にして一変しました。ですから、
ここから先の調整地合いは、「小幅なもの」
になる可能性が高まりました。
<今回は以上です。>
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