「先高期待はあるものの、今は様子見ムード」
[1] 市況展望(執筆日時:11月14日 24時)
(1) 過去1ヵ月間を振り返ってみます
前回(10月13日配信)のこのメルマガでは、
文末の<短いまとめ>のところで、
「当面のところ、10月25日までは選挙相場
によって、日経平均株価は、
『39,700円前後〜40,250円』
くらいまでの上昇が見込まれます。」
と述べました。
また、
「いずれにしましても、10月25日までは
上昇基調が維持されるでしょう。そして、
それ以降は、どちらに振れるのかはわかり
ません。
そういった場合には、衆院選挙前の高値
圏で、トントンかプラスのものは一旦
手じまいしておくのが無難です。」
と述べました。
現実の日経平均株価は、このメルマガを
配信した翌営業日の10月15日に、予想した
高値の「40,257円」がいきなり付きました。
予想した「高値の水準」はピッタリ当たった
のですが、「時期と推移」が全然ハズレて
しまいました。
いきなり最高値を付けて、その後は24日
まで下落して、衆院選の翌日から上昇に
転じましたので、推移の順番が逆になって
しまいました。
「高値の水準」の予想が当たっても、
「時期と推移」が全然ハズレてしまっては
予想の的中度としては「100点満点のうち
の50点以下」ですので、猛省しています。
ただ、上にも記載しましたように、
「そういった場合には、衆院選挙前の高値
圏で、トントンかプラスのものは一旦
手じまいしておくのが無難です。」
と述べましたので、これを文字通りに
とらえていただいて、「40,257円」の
高値を付けた10月15日に、トントンか
プラスのものを手じまいしておかれた
方には、一定の効果はあったかとは
思います。
このことからの学びとしましては、
「想定よりも早く高値圏に到達した
場合は、『まだもっと伸びるのでは
ないか』と期待するのではなく、
絶対的な水準が高いという事実を
重視して、売るべきものは売って
おくのが、正しいのではないか」
ということです。
もちろん、「まだもっと伸びる」
こともありますが、今回のように
「もう伸びない」こともありますので、
絶対的な水準が高い時には、売るべき
ものは、淡々と売っていくのがよい
のであろうと考えています。
(2) 衆院選までが下落基調だった原因
このように、衆院選の投開票日の12日
も前に高値を付けて、それ以降が下落
基調だった原因は、ちょうど10月15日頃
から、「自公が劣勢」という「前評判」
が伝わり始めたことが主な要因でしょう。
(3) 衆院選直後から上昇基調になった
原因
そして、自公は、その「前評判」
どおりか、それよりも酷い負け方を
しました。
衆院選の投開票日よりも前の時点
では、「自公が負ければ、株価は
選挙後にも下落する」というのが通説
でしたが、実際に、自公が負けた翌日
から、日経平均株価は上昇に転じました。
このように、事前の通説とは真逆の
動きになった理由は、主に次の2点
でしょう。
・投開票日の前に、日経平均株価は
大きく下落していて、「自公大敗」
を充分に織り込んでしまっていたから
・自公が、あまりにも負けすぎたので、
市場参加者が、「ここまで大敗したら、
むしろ、政府は国民が喜ぶような
経済政策を打ち出して、形勢の挽回
を謀るのではないか」と期待したから
このように、実際の株式市場の動きは、
事前の予想とは異なる反応を示すことが
ありますので、なかなか予想どおりには
いかないものです。
(4) 衆院選後の株価推移
早々に、10月15日に直近の高値を
付けた日経平均株価は、衆院選直前
の24日と25日に直近の安値を付けて、
衆院選後から上昇に転じました。
3営業日上がって、2営業日下がり、
2営業日上がって、4営業日は高値圏
でもみ合いでした。直近の高値は
「39,884円」(7日)で、13日には
前日比654円安と、大きく下がりました。
14日も前日比185円安の「38,535円」
で終わりました。
この1ヶ月の間に衆院選とアメリカ
の大統領選という2つの大きな政治
イベントがありましたが、終わって
みれば、「37,700円〜39,900円」と
いう、比較的安定したボックス圏内で
推移してきた、というわけです。
そして、衆院選後のこれまでの
ところでは、(今月の1日と13日には
比較的大きな下落がありましたが、)
近日中に日経平均株価が「38,100円
を割らなければ」、衆院選後は、日経
平均株価は実は「緩やかな右肩上がり
を維持している」のです。
[2] 今後の日経平均株価の行方
(1) 注目は「政治」から「経済」へ
2つの大きな政治イベントを通過
しましたので、市場参加者の注目は、
「政治」から「経済」へ移りました。
つまり、「政治への期待や失望」
から「経済の実態」へと関心が移った
ということです。
株式市場が通常の姿勢に戻る、と
いうわけです。
そこで、14日の時点でほぼ出揃った
企業業績に基づく、日経平均株価の
ファンダメンタルズ指標とテクニカル
指標を簡潔に概観します。
(「ストキャスティクス」を
「ストキャ」と略して表記します。)
日経平均のEPSの値 −− 2,425円
日経平均のPERの値 −− 15.89倍
日経平均のBPSの値 −− 27,138円
日経平均のPBRの値 −− 1.42倍
日経平均のROEの値 −− 8.9%
日足のRSIの値 −−− 53.57
日足のストキャの値 −− 0.00
週足のRSIの値 −−− 61.16
週足のストキャの値 −− 32.36
<コメント>
日経平均のEPSの値は「2,425円」
で、比較的高い水準を維持していますが、
第2四半期決算が発表される前の10月
15日に「2,515円」という史上最高値を
記録していますので、第2四半期決算が
出揃ったことによって、「90円、率に
して3.58%」は業績が下方修正された
というわけです。
このように業績が下方修正される
のは先行きに暗い影を落とします。
そこで次に、日経平均のPERの値
に目を転じます。
日経平均のPERの値は、8月5日
のブラックマンデー以降、11月6日
までは、上値の値が一番高くても
「15.94倍(9月3日)」まででした。
それが、11月8日には「16.22倍」
が付いており、徐々に立ち直ってきて
います。
PERの下値の値も地道に切り
上がっています。
(PERの下値は、
9月11日 −− 14.61倍
10月2日 −− 15.36倍
10月25日 −− 15.28倍)
今年に入ってから、ブラックマンデー
までの7ヶ月間の日経平均のPERの値
の総平均値が「16.52倍」ですので、
PERの上値の値は、このくらいの水準
までは戻ってもおかしくはないでしょう。
11月14日のEPSの値が「2,425円」
ですので、それを基にして、高値を
想定してみますと、
2,425円 × 16.52 = 40,061円
となりますので、4万円回復も
理論上は充分にあり得ます。
一方で、日経平均のPBRの値が
11月14日の終値で「1.42倍」となって
いますが、これについても、今年に
入ってから、ブラックマンデーまでの
7ヶ月間の総平均値が「1.48倍」です
ので、PBRの上値の値も、このくらい
の水準までは戻ってもおかしくはない
でしょう。
11月14日のBPSの値が「27,138円」
ですので、それを基にして、高値を
想定してみますと、
27,138 × 1.48 = 40,164円
となりますので、BPSやPBRと
いった資産指標の面からも、4万円
回復は、理論上充分にあり得ると
いうことになります。
ただし、これはあくまでも
「日経平均株価がブラックマンデー前
までの勢いを取り戻す」
という仮定に基づく「上値(=高値)」
の予想値ですから、これに届かない
というシナリオもあり得ます。
なお、日経平均のPBRの値が
「1.48倍」というのは、日経平均の
ROEの値が「8.9%」であること
から判断すると、「やや高いか、
妥当」と考えられます。
なお、日経平均のBPSの値に
ついて特筆すべきは、その値が
ピーク時の「28,713円」(今年の
10月15日)から「27,138円」まで、
1ヶ月で「1,600円」(率にして
約5.5%)近く減少しているという
ことです。
このことから、ROEの値を改善
する目的で、自社株買いを敢行して
いる企業が多いのではないかと推測
できます。
そして、テクニカルの面を見て
みます。
RSIの値は、日足でも週足でも
中位か、やや高めですが、ストキャ
の値は日足は「0.00」で極限まで
下がっていますし、週足も「32.36」
なので、かなり低めです。
ストキャはRSIよりも、反応が
早めに極端に出やすいのですが、
これらの値からは、向こう1〜2ヶ月
以内に、株価が底打ちして反転する
のではないかと予想されます。
週足のチャートを見ますと、株価
推移が、「あと数週間以内に上に
放れる三角保ち合い」になっています
ので、大きな悪材料が噴出しなければ、
日経平均株価は、あと数週間以内に
上に向かう可能性の方が高いと考え
られます。
ただし、もちろんこれも、「上に
放れる三角保ち合い」が必ずしも
上に放れるとは限らないですので、
あくまでも「確率が高い」という
ことに過ぎないことには留意が必要
です。
[3] トランプ氏が大統領だと、
日経平均株価はどうなるの?
「トランプ氏が大統領になるという
ことは、日経平均株価はどうなるの?」
ということを、これまでにもよく耳に
しましたが、日本市場では、「当面は
様子を観よう」というムードなのだと
思います。
ガンガン上がるわけでもなく、
下がるわけでもなくて、今のところ、
日本の株式市場は、トランプ氏が
大統領になることによる日本経済へ
の影響を慎重に見極めよう、という
センチメント(心情)なのだと思うの
です。
そこで思い出しておきたいことは、
第1次トランプ政権(「トランプ 1.0」)
の時のことです。
当時は、米中貿易戦争の状況が株式
市場に大きく影響していました。
トランプ氏の「爆弾的な発言」で
日米の株式市場が急落し、パウエル
議長が火消しをする、といったことが
何度もありました。
ですから、「トランプ 2.0」でも
同じようなかんじになるのではないか
と思量しています。
すなわち、「トランプ氏が大統領
だから、株価が上がる!」でもなく、
「下がる!」でもなくて、その時
その時のトランプ氏の言動で市場が
上下する、といったことになるの
ではないか、というわけです。
そして、トランプ氏は「ドル安が
望ましい」と言いながらも、彼が
打ち出している政策は、インフレを
誘発するものばかりです。
・関税の強化=米国内の物価高
・減税=米国民の購買力UP=物価高
・不法移民の排斥=賃金上昇
ということなのです。
そして、インフレが進めば、
FRBは金利を下げにくくなります
し、むしろ金利は上がるかもしれない
ので、結果としては、ドル高方向に
向かいやすくなります。
要するに、「トランプ 2.0」の
政策は、次のようにまとめることが
できます。
・関税の強化は、米国内の物価高の
要因にはなるが、必ずしも株高
とは限らない。なぜなら、関税の
強化は、米国内の景気も冷やして
しまうから。
・減税は、米国民の購買力がUPし、
企業業績にもプラスなので、株高。
・不法移民の排斥は賃金上昇を
通じてインフレ要因にもなるが、
もっと大きな問題は、米中対立の
深刻化であり、これは株安を招く。
そして、金融政策(=FF金利の変更)
を通じて、株安をカバーできれば、
NYダウは上昇を維持できるだろう
というわけです。
当面の間、「トランプ 2.0」の政策
と、パウエル議長の舵取り、そして
AIの発展がうまくいっている間は
NYダウは堅調で、日経平均株価も
大きな下落は起こりにくいでしょう。
私が心配なのは、「トランプ 2.0」
の政策ではなく、パウエル議長の
帰趨です。
パウエル議長が更迭されたり、
健康不安に見舞われたりした時の
方が、日米の株価には大きな負の
影響が及ぶでしょう。
パウエル議長の政策遂行能力は
秀逸の極みであり、余人を以て
替えがたいと思うからです。
[4] アメリカのFF金利の推移
これからのアメリカのFF金利の推移
は「1996年〜2000年型」、すなわち、
2度ほど下がるが、あとは横ばいで、
再度、少し上がって、また下がる、
といった「例外的な動き」になるの
ではないかと予想しています。
FF金利というのは、通常であれば、
上か下への一方向に変更されるのです
が、アメリカ経済の現状と「トランプ
2.0」の政策の中身を勘案すると、
向こう2〜3年は「1996年〜2000年型」
の推移になる可能性が高そうです。
そしてその間の(1996年〜2000年の)
NYダウは、2000年1月までは、
1997年の秋と1998年の秋に調整を
はさみながらも、継続的に右肩上がり
でした。
2000年1月からも、2001年5月に
ITバブルが崩壊するまでは、高値圏
でのもみ合いが続いていました。
現在、AIに市場が湧いていますので、
デジャヴの感があります。(歴史は
繰り返すのですね。)
現在のAIバブルが崩壊するまでは
NYダウは右肩上がりと高値圏での
もみ合いになるような雰囲気です。
つまり、FF金利の「1996年〜2000年
型」の推移は、
「FF金利が変則的な動きになっても、
国内経済が強い間は株価は下がらな
かった」
ということを示していますので、
トランプ大統領が経済の舵取りを
うまくこなしている間は、株価は
堅調に推移する、ということです。
なお、1996年〜2000年の日本は
「平成不況」の真っ只中でしたから、
アメリカの金利やNYダウとは全く
連動していません。
日経平均株価は、1996年6月が
高値(22,666円)で、1998年10月が
安値(12,879円)。そして、2000年
4月が高値(20,833円)で、2003年
4月まで沈みっぱなし(安値は
7,607円)という体たらくでした。
<今回は以上です。>
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